ペットの安楽死とは飼主さんや獣医師の判断により、
ペットの命を断つことです。

ペットの安楽死をどの様に考えるかは、一人一人それぞれ異なっています。

安楽死は適正な理由がなければ、行うべきではありませんが、
その安楽死の判断が適正か否かは、飼主さんの判断に任されます。

日本では、人の安楽死は法律で禁止されていますが、
ペットの安楽死に関する法律はありません。

近年、人の高齢化とともに、ペットの寿命も延び、高齢化も進んでいます。
高齢になるとペットも寝たきりになったり、認知症になったり、
不治の病気になったりもします。
そうなると、ペットの看護や、介護をいかにするのかの問題に直面します。

また、高度な医療が可能となり、
以前は不可能だった救命や延命治療が可能
 になったことにより、
様々な問題が生じてきた側面もあります。
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近年、日本人のペットに対する考え方も大きく変わり、
ペットたちを「たかが犬や猫」ではなく、家族の一員と見て、
人の家族 と同じように生活や健康などを考える人も多くなりました。

ペットにおいて、高度の治療を行っても回復や苦痛の緩和が困難であったり、
生活の質が著しく損なわれる場合などでは、
安楽死も一つの選択肢になり得ます


このような状況になった際に、
安楽死の選択を誰が切り出すのかといった問題もありますし、
獣医師の中には、飼主さんが安楽死を希望しても、拒否する人もいます。
飼主さんへ安楽死の判断を強制することはできませんし、
獣医師へ実施することを強制することもできません

ペットにおいては、人間の患者さんのように患者さん本人の意思や希望を
口頭や書面などで確認することはできません。
飼主さんが、そのペットのための、最善の方法を憶測するしかできません。
飼主さんの意思がそのペットの意思とされます。

飼主さんと獣医師が、動物の感じる苦しみを想像するしかありません。
動物自身が死を望んでいるのか否かは理解できません。
動物の感情を推し量ることしかできません。

日本では、ペットの痴呆による様々な問題が飼主さんを悩ませますが、
アメリカには、この問題はほとんどないとされています。
理由は安楽死を行うからです。

国による国民性の違いなのでしょうか。
西洋文化圏では、動物の生命の 維持よりも、
その生活状態の維持や苦痛の除去が優先されているようです。

安楽死が妥当と思われる主な状況としては、
長期間の治療による末期的病状や老齢による身体機能の著しい悪化。
重篤な傷害を負い、治療が困難あるいは飼主の負担できない高額な治療費が必要。
身体健康ではあるが、修復が難しく飼育管理の困難な行動や気質がある。
健康ではあるが、適切な飼育管理が困難な環境にある。
などが考えられますが、
これも飼主さんや獣医師によっても、判断基準が異なると思います。

日本でペットの安楽死が非常に少ないのは、
日本人の宗教観や動物観、 生命倫理観などが影響していると考えられています。


安楽死処置後において、飼主さんがこの処置が良かったのか、
罪悪感や後悔などの感情を抱くことにもしばしばあります。

処置を実施する前に、家族間での十分な話合いと納得が必要になりますし、
獣医師との間にも相互の信頼が必要になります。

安楽死の方法は、いくつかありますが、
一般的には、手術と同じように麻酔を行います。
初めに血管を確保し、静脈注射にて麻酔薬を投与します。
(状況によっては吸入麻酔薬を用いることもあります)
麻酔薬が効くと意識は無く、痛みも感じない状態になります。
その後、薬剤を点滴あるいは注射で投与し、
心臓や肺、脳の機能を止めます。
意識がなくなるまでは、飼主さんに付き添ってもらいます。
(病院により処置の方法が異なりますし、
飼主さんの考えによっても変わります)
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